イチロー選手が2016年6月15日にヒット2本を放ち、日米通算の安打数を4257本とし、ピート・ローズの持つメジャーリーグ通算最多安打記録(4256安打)を上回りました。これに対し、ピート・ローズ氏は「メジャーよりレベルが低い日本のプロ野球で打ったヒット数を加えるのはおかしい」、「イチローが日本で打った1278本を加えるなら、僕がマイナーで打った427本も加えておくれよ」といった否定的なコメントを残しています。
たしかに日本のプロ野球がメジャーと同レベルとは思わないですが、一体どのくらいの差があるのでしょうか?また、イチローが日本でプレーしていたとき、総試合数は130試合、あるいは、135試合でした(メジャーは162試合)。むしろ日本のプロ野球の方がヒット数を量産するのは難しいんじゃないでしょうか?
この投稿では、日本プロ野球で打ったヒット1本が、メジャーのヒットに換算するとどの程度の水準なのか、考えたいと思います。
日本プロ野球とメジャーの両方でプレーした野手
日米のヒットの換算レートを検討するにあたり、日本プロ野球とメジャーの両方でプレーした野手の成績を調査することにしました。各選手について、日本での最後の3年間、メジャーでの最初の3年間(3年間のプレー実績がない選手は在籍期間分)について、打率の増減率を算出しました。それぞれ3年間に絞った理由は、比較的実力の向上・衰退の影響を少なくし、かつ、統計的な有意性を確保するため(たまたま、この年打ったor打たなかったという要素を排除するため)です。
田口選手が唯一「+5.2%」とプラスになっていますが、その他の11選手はいずれもマイナスになっています。これらの12選手のうち、増減率が最大と最小の田口選手・中村選手はレアケースと考えられるので、2選手を除き10選手について増減率を平均すると、上表網掛けのとおり「-13.8%」となりました。つまり、日本で3割ちょうど打っていたバッターは、.259くらいになると考えられます。
この点はピート・ローズ氏の主張通り、日米野球には厳然たるレベルの差が存在することが分かります。元メジャーリーガーの助っ人外国人選手で同様の集計をやってみてもいいかもしれませんね。
試合数も加味して考える
ここで試合数も加味して日米ヒットの換算レートを完成させます。メジャーの試合数は162試合、日本を現行の144試合とすると換算レートは「97.0%」となりました。つまり、日本のヒット1本は、メジャーの0.97本にあたると考えることができます。ただし、冒頭でも述べたとおり、イチロー選手が日本プロ野球でプレイした期間の総試合数は130試合、あるいは、135試合でしたので同様に換算レートを算出すると「103.4%」、「107.4%」となります。つまり、イチローがプレイしていた試合数が少ない期間に限っていうと、日米間のレベルの差を考慮しても日本でのヒット1本の方がメジャーの1本より稀少性が高いといえるのです。
まとめ
日米でプレイした12選手の成績から、平均的には日本の打率を「-13.8%」させた(86.2%をかけた)値がメジャーの打率、という水準感を確認しました。
しかし、このような日米間のレベルの差があったとしても、イチローが日本でプレイした期間の試合数を考慮すると、むしろ日本でのヒット1本の方がメジャーの1本より稀少性が高いことが分かりました。
最後に、イチローには60歳くらいまでプレイして、日米通算ではなくメジャーだけでピート・ローズ氏の記録を抜いてもらいたいものです。